口腔カンジダは口の中にカビが生える?

口腔カンジダ症という感染症をご存知でしょうか。
カンジダとは真菌の一種であり、端的に言ってカビの仲間であると言えます。
本来、ヒトの体にカンジダが感染することはありません。
カビが体に生えたことのある人はまずいないでしょうが、普段は体の防御システムや皮膚などのバリアが何重にも張り巡らせたセキュリティのように体を守っているからです。

しかし、このカンジダはある条件下でヒトの粘膜や皮膚に感染してしまうのです。
その条件とは感染を防御するはずのバリアを担う、防御システムの破綻です。
口腔カンジダ症であれば本来唾液に含まれる抗体の力で胞子の発芽は抑えられるはずです。
また口腔内の種々の常在細菌などによってもカンジダの活動は抑制されますので健常な身体にはカビは生えてこない、という理屈になるわけです。

しかし、唾液中の抗体の量が減少していたり、そもそも唾液の分泌量がかなり少ない場合、あるいは口腔内の常在細菌叢バランスが破綻していたり、基礎疾患がある、あるいはステロイドを投与したなどの理由などで感染への抵抗力が抑えられている場合、口腔内や食道にカンジダが定着し感染を起こします。

高齢者は特に感染への抵抗力が下がっていたり、基礎疾患を抱えているなどの理由から比較的こういった真菌の感染症に罹りやすい傾向にあります。
また、近年はHIVによって感染に対するバリアが不十分な人が若年層を中心に増加していると言います。
HIVは母から子へと移っていくものですのでもはや口腔カンジダ症は大人から子供までかかる可能性がある疾患なのです。

口の中に違和感を感じたなら、鏡で口の中を観察してみてください。
口腔内の粘膜に白い斑点が浮かんでいるのだとしたら、それは口腔カンジダ症かもしれません。
放っておいて治る場合もありますが多くは体の抵抗力が低下しているために起こっているので、無理をせず医療機関で抗真菌薬を処方してもらうのが最も確実な対処法でしょう。

唾液の分泌が少ないと発症しやすくなる?

前述のとおり、カビの仲間であるカンジダは口腔内の防御機構が破綻した際に育ち、カンジダ症を発症させます。
そのバリアを担う最大の要因は唾液に含まれている抗体の作用ですが、その抗体の分泌量が少ない、あるいは唾液そのものの分泌量が少ない場合、十全な感染防御を達成できずにカンジダ症を発症してしまいます。

また、唾液には口腔内の粘膜を潤し、バリアを保つ働きもあります。
粘膜は常に湿った状態にする必要があり、万一乾かしてしまうとひび割れて粘膜下層が露出してしまいます。
ここに微生物が感染することによって血液系を侵し、全身に重篤なダメージをもたらす可能性もあります。

赤ちゃんでは唾液の分泌量も少ない上に、防御機構がまだ未熟なので抗体の分泌量も少なく、新生児は特に口腔カンジダ症を発症しやすいことで知られています。
多くは周囲のものを舐めたり、母親の母乳を飲む際の乳首についている胞子を口腔内に入れてしまった場合ですが、哺乳瓶の飲み口やや床など様々なところにカンジダの胞子は潜んでいます。
赤ちゃんは口腔内に限らず防御機構もまだまだ未熟であるため、発症したらかなり気を使わなくてはならないでしょう。

感染を防御することも大事ですが、特に赤ちゃんなど唾液の産生が未発達の場合、あるいは高齢者のように不十分な量しか唾液を産生できないという患者の場合、そもそも胞子を取り込まないで済む環境を作らなくてはなりません。
身の回りものを消毒し、乾燥させることによってカビの繁殖を抑制し、健康で清潔な環境を作る必要があります。
カンジダをたかが普通のカビとは馬鹿にできません。
発症して苦しまないように普段から感染防御に努め、周囲の環境を清潔なものにして生活していきましょう。